一般社団法人日本CTO協会が協会会員と招待客の方々に感謝を伝えるべく開催したオフラインイベント「#ThanksGivingDay2022」。
本記事では、スポンサー企業と協会理事により対談形式で行われた5つのセッションから、「ガチトーク『プログラミングスクール卒って使えなくないですか?』プログラミングスクールへの不満をスクールが全部受け止めます」をご紹介します。

登壇者紹介

小賀 昌法 氏

一般社団法人日本CTO協会 理事
トラボックス株式会社

2010年から2021年まで株式会社CARTA HOLDINGS/株式会社 VOYAGE GROUPでCTOを務め、退職後もTech Boardアドバイザリに従事。企画・監修した『Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち』がITエンジニア本大賞2021で大賞&特別賞のダブル受賞。2022年1月、トラボックス株式会社に入社。

菊本 久寿 氏

株式会社スタートアップテクノロジー 代表取締役

SIerなどを経てngi group(現ユナイテッド) 技術部部長に就任し、アドテク関連サービスの立ち上げを行う。2012年よりフリーランスとして独立し、複数のスタートアップの開発支援を行う。その後ポケットコンシェルジュを運営する株式会社ポケットメニューの取締役CTOに就任。退任後2014年10月に新サービスの立ち上げに特化して開発を行う株式会社スタートアップテクノロジーを設立。

Topic 01 プログラミングスクール卒って使えなくないですか?

[小賀]
今日、僕はいやらしい質問をする役割で進めていきたいと思っています。
いきなりごめんなさい。プログラミングスクール卒業生って使えなくないですか…?大丈夫ですか…?

[会場]
(笑)

[小賀]
エンジニアを「増やしていきたい」「増やしていかないといけない」という世の中のニーズや社会課題はある一方で、正直なところ、プログラミングスクール卒業生の場合「使えない」方って多いですよね。
会場の皆さんに聞きたいのですが、書類選考時に「プログラミングスクール卒」と書いてあった場合、その書類をワクワクして読み進められますか?

[会場]
(笑)

[小賀]
正直、結構厳しいところはありますよね。
ただ、皆さんも「プログラミングスクール卒」という肩書に対して「なんか引っかかるけど言語化できていない」ポイントがあるかと思います。
そこを今回、プログラミングスクールRUNTEQを運営されている菊本さんに伺えればと思います。
では早速ですが。プログラマーが必要になった時、コードが書けない候補者は正直お話にならないですよね。そもそも、プログラミングスクールを卒業するとコードってどれくらい書けるようになるんですか?

[菊本]
皆さんがプログラミングスクール卒業生に対して不満に思う点として、「教えてあげないといけないことが多い」という点が挙げられるかと思います。RUNTEQでは1,000時間の学習ボリュームを用意しているため、「開発環境構築」「READMEからコードリーディング」「簡単なタスクのプルリクエスト」というところまでは到達できるかと思います。

[小賀]
1,000時間の学習とは、具体的にどのようなことをするのですか?

[菊本]
カリキュラムには「コードを書き、プルリクエストを投げる。」といった、いわゆるタスクのようなものが用意されており、それに取り組んでもらいます。
カリキュラムが進むにつれてタスクの難易度が上がっていき、最終的には現場レベルの難易度になるといった流れです。
一部座学もあるのですが、基本的にはタスクをひたすら回していくような学習となります。

[小賀]
学習中に受講者がつまずいてしまった場合のサポートはどのようにされていますか?

[菊本]
面談を実施するケースや、フォームから質問を受け付けるケースがあります。ただ質問するだけでなく、自分で解決する力を養うために、質問フォームは入力のフォーマットを決めています。
また基本的には答えをそのまま教えることはなく、ヒントを教えるようにしています。一見厳しいようにも思えますが、受講者のコミュニティ内で教え合ったりすることでもカバーできています。

[小賀]
いやらしい質問ばかりで恐縮ですが、卒業生が参画した現場から「あなたのところの卒業生は出来が悪くて困る」みたいな声ってあったりするんですか?

[菊本]
RUNTEQではないですね。
もともと僕もプログラミングスクール卒業生は「使えない」と思っていた側の人間だったのですが、その理由が「教えてあげないといけないことが多い」という点にあると気付きました。そういった問題を解消するために、1,000時間のボリュームでタスクを回すカリキュラムを生み出しました。

[小賀]
さらにいやらしい質問をしていきたいと思います。
コードをちょっと書いて修正するだけでは仕事って進まないですよね。アサインされたissueやチケットに曖昧な表現があった際に、正確に仕様に落とし込んでいくことも求められます。書かれていることだけをそのとおりに実行されて、「そうじゃないんだよなぁ」ってなることって、特にプログラミングスクール卒業生に多いような気がします。
そういったところってRUNTEQでは対策されていますか?

[菊本]
カリキュラムが進むごとに、ふわっとしたタスクやお題になっていきます。また卒業時には、オリジナルアプリケーション制作を課しており、企画からリリースまでやらせています。そこでは、サービス志向で企画の作り方からレビューに対しての修正方法などまで教えています。

[小賀]
それって結構な手間ですよね。
ちょうどこのタイミングで、次のトピックに移りたいと思います。

Topic 02 プログラミングスクール卒、教えるのめんどくさくないですか?

[小賀]
かなり手間がかかってるように思えるので、サービスとしてスケールしづらそうだったり、提供するサービスの均一化が難しくなることにより、卒業生のスキルにも差が出てきてしまいそうと感じました。そのあたりはいかがですか?

[菊本]
全てのレビューを人力で行うと、サービスの質の低下につながってしまうと考えます。そのため、lintとカリキュラムに沿った受け入れテストは、あらかじめ作っておいたもので自動採点をしています。その上で「良いコード」の例が表示されるようにしています。

[小賀]
自動化をするにしても、言語ごとに作る必要があるかと思うので、かなり大変そうに思います。そこはいかがですか?

[菊本]
実際、大変です。ですが、できなくはないので進めています。

[小賀]
「教える」というよりは、「仕組みを使ってもらう」という点にフォーカスしているのですね。

[菊本]
もちろん、人が教えたほうが良い部分というのはあると思いますが、「教える」をシステム化し、均一化することにより、全員に対してばらつきなく教えることが可能になると思っています。

[小賀]
それでもやはり、仕組みで教えるには限界があるかと思います。どう対応されているのでしょうか。

[菊本]
イベントやコミュニティ内での教え合いなどで学ばれている方が多いですね。

Topic 03 プログラミングスクール卒ってすぐ辞めちゃわないですか?

[小賀]
プログラミングスクールに通っている人は「プログラミングが好き」というより、「お金のため」「フルリモートで働けるから」という理由が多く、続かないんじゃないかと思ってしまうのですが、実際のところどうなんでしょう。

[菊本]
特にスタートアップにおいて、採用時に「カルチャーフィット」を重視する企業が多くなってきているかと思います。そのため、受講生に対して「カルチャー教育」のようなことを実施しています。具体的には、カルチャーフィットするために知っておくべき業界情報やマインドセットなどが挙げられます。
またRUNTEQ CREDOというMVVのようなものを設定しており、入学時から叩き込んでいます。そうすることにより、「お金」や「働き方」だけでなく「ものづくりを楽しむ」「エンジニアを楽しむ」という想いを持ってもらおうとしています。

Topic 04 プログラミングスクール卒ってお金かリモートワークにしか興味ないんでしょ?

[小賀]
僕自身このトピックに関して、一概に悪いことだとは思っていません。エンジニアは稼げるし働きやすいという評判が広まることにより、エンジニア人口が増え、優秀なエンジニアが増えていくと思っています。ただやはり、きっかけとしてはこういう方が多いのでしょうか?

[菊本]
そうですね。
コロナで働けなくなったり、DX化の流れを組んだ結果、「お金」や「働き方」という観点からエンジニアという選択を取り始めた方は多いです。ただ卒業するまでにそのマインドを変えないと、企業からは嫌われてしまうと思います。

Topic 05 なんでそもそもプログラミングスクールなんかやってるんですか?

[小賀]
プログラミングスクールの運営って、大変な割に報われにくいのかなと思ってしまうところがあります。「プログラミングスクール卒なんて」と言われてしまうことも多いかなと思うのですが、そもそもなぜプログラミングスクールをやろうと思われたのですか?

[菊本]
私自身もスタートアップのCTOなどをやってきた中で、エンジニア採用にはずっと苦労してきましたし、周りのスタートアップさんも苦労されている事実を見てきました。今もそうですが、少ないパイの単価を釣り上げて取り合っている状況は良くないと思い、パイを増やすべきだと考え、プログラミングスクールをやろうと決めました。CTO協会さんのように、トッププレイヤーから業界を変えていこうとされている組織がある一方で、私はローレイヤーから盛り上げていきたいと思っていますので、さらに頑張っていきたいと思っている次第です。

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