一般社団法人日本CTO協会が協会会員と招待客の方々に感謝を伝えるべく開催したオフラインイベント「#ThanksGivingDay2022」。
本記事では、スポンサー企業と協会理事により対談形式で行われた5つのセッションから、「これからのエンジニア採用・育成のあり方」をご紹介します。
登壇者紹介
小賀 昌法 氏
一般社団法人日本CTO協会 理事
トラボックス株式会社
2010年から2021年まで株式会社CARTA HOLDINGS/株式会社 VOYAGE GROUPでCTOを務め、退職後もTech Boardアドバイザリに従事。企画・監修した『Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち』がITエンジニア本大賞2021で大賞&特別賞のダブル受賞。2022年1月、トラボックス株式会社に入社。
小川 充 氏
株式会社ギブリー Trackプロダクト テックリード
2011年からHTML5の可能性に魅了されてFrontendの世界に没頭する。2016年から株式会社ギブリーに参画。Trackの立ち上げ前からプロジェクトに参加し、今でも成長を支えている。
採用・育成についての困りごとについての意見交換
※本セッションでは、はじめに会場の参加者が「採用・育成についての困りごと」に関して5分ほど意見交換をし、その後代表者による発表をもとに議論が進められました。
[小賀]
それでは、どんな困りごとが出てきたか皆さんに伺いたいと思います。ご着席いただいているテーブルごとに、話したい方はぜひ挙手をお願いします。
[参加者A]
私たちのテーブルでは、どなたも似たような困り事がありました。採用の面では、「中間層でマネジメントができる人材がいない」という課題が挙がりました。また育成の面では、「育成できる人がおらず、そこまで工数をかけられない」という課題が挙がりました。
[小賀]
マネジメントができる人材がいないというのは、スキル面でしょうか?それともカルチャーフィット面でしょうか?
[参加者A]
どちらかというとスキルです。
求人は出しているのですが、応募すらなかなか来ないというのが現状です。
[小賀]
ありがとうございました。
他に話したい方はいらっしゃいますでしょうか。
[参加者B]
今出たご意見とほとんど同じものになってしまうのですが、中間層であるリーダー・マネージャークラスが取れていないというのが課題になっています。求人を出していても応募が来ないため未経験を採用するのですが、やはり中間層が不足しているので育成もできないという課題も同時に発生しています。
[小賀]
ありがとうございます。
やはり世の中にエンジニアは足りておらず、特に、開発も育成もできるような中間層が足りていないと思っています。では、足りないところをどのようにして解決していくのかというのが今回のテーマでもあるのかなと思います。
[小川]
正直、中間層は本当にどこにもいないですね。そういった中で、ジュニア層を育てていくという手法を取る企業が多いですが、先程お話があったように、育てる人がいなければ手厚く育てるコストもかけられない。という課題を皆さんお持ちなのかなと思います。
[小賀]
そういった課題に対して、株式会社ギブリーさんのTrackを用いて、その辺りの課題をどのように解決していくか考えて行きたいと思います。はじめてTrackを知る方向けに補足しますと、Trackは、ギブリーさんが運営するエンジニア採用・評価・育成の支援サービスの総称です。エンジニアの採用選考で使えるコーディングテストツールTrack Testや、IT領域の学習コンテンツが搭載された学習管理システムTrack Trainingなどがあります。
採用のキーポイント
[小賀]
それではまず、株式会社ギブリーさんが考える採用のキーポイントを教えていただきたいです。
[小川]
こちらです。
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01:ミスマッチな候補者を採用しない
02:貴重なエンジニアリソースを無駄にしない
03:優秀な候補者への面接に多くの時間を費やす
04:エンジニア採用プロセスをアップグレードする
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最終的には、ミスマッチを防ぎたいという思いに行き着くかと思います。エンジニアの採用コストはとても高く、また、忙しいマネージャークラスが面接をすることによるコストも非常に高いです。そういう背景から、ミスマッチを起こしてしまうとコストダメージは非常に大きなものになるかと思います。ですので、ミスマッチを起こさないように面接を工夫したりする必要があると思います。
[小賀]
おっしゃるとおりだと思います。
ミスマッチにも「スキル面」と「カルチャーフィット面」の2つがあると思うので、効率的にできるところと時間をかけるべきところを見定めた上で、自社にとってどういう人材が必要で、どちらを重視すべきなのかを考えるべきだと思います。とはいえ、どちらも重要なので、いかにうまく省力化していくかが大事になっていくと思います。
気になったのが、ポイント04の「エンジニア採用プロセスをアップグレードする」なのですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
[小川]
採用面接をする上で、第一印象による確証バイアスによって客観的な判断ができなくなってしまうことを防ぐために、機械的に評価をできるようにしていこうというものです。そういったアセスメントを外注していく例として、アメリカのユニコーン企業であるKaratが提供する、面接などの代行サービスがあります。ですので、ミスマッチを防ぐという点において、ツールを入れることにより効率的かつ標準化していく必要があると思います。
[小賀]
採用プロセスの中で、外部サービスやツールを使わずに直接会って話しているという声は多いですか?
[小川]
そうですね。ただ、限られた時間でスキル面とカルチャーフィット面の両方を見るのって大変だと思いますし、そういったところが採用を難しくしている要因なのかなとは思います。
[小賀]
前職でコーディングテストツールTrack Testを利用していたのですが、自社でコーディングテストを作問して採点するのってすごく大変ですよね。新卒採用向けに3回程度やってみたのですが、本当にしんどかったのでTrack Testを導入してみることにしました。結果として省力化につながりましたし、効果的だったと感じました。
[小川]
コーディングテストを自社内でやるのはとても大変ですが、テストによって候補者の良い面と悪い面が明らかになるので、入社までに悪い面のレベルアップをさせてあげることができれば、入社後のパフォーマンスにも影響してくるかなと思います。
[小賀]
特に人手が足りていない時、「すこし要件に足りていないけど採用してしまおう」ということはよくあると思います。ですが、採用の大事なところは、採用することではなく、採用した人が入社後に活躍するところにあると思っています。ですので、事前にコーディングテストなどで「足りていないところ」を明確にし、トレーニングしておくことにより、入社後のパフォーマンスにもつなげられるのかなと思います。それを社内リソースだけでやるのはとても大変だと思うので、基礎的な部分だけでも外部サービスを使ってみるのは良いことだと思います。
育成のキーワード
[小川]
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01:技術進化に遅れをとらない
02:初心者でも離脱させない
03:学習状況をブラックボックスにしない
04:必要以上のコストをかけない
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育成の観点で話すと、育成コストの大半は人件費や研修に使うコンテンツだと思っています。しかしながら、Track Trainingのような学習プラットフォームを使用すれば、すでにコンテンツがたくさんあるため、コスト削減ができます。ですので、リソース不足により研修導入を見送っている企業には良いんじゃないかなと思っています。
[小賀]
自社のドメイン知識を増やし、それをコードに反映させるということが、これからは重要になっていくと思っています。ですので、ドメイン知識を得たり、ドメイン知識からコードに落とし込むための訓練の時間を増やしていくべきだと思っています。そのためには、ツールの知識やテクノロジーのアップデートをTrack Trainingのようなサービスを頼るという戦略も有効だなと思いました。
そのように活用されている企業って増えてきたりしますか?
[小川]
自社で用意した研修コンテンツを、実際に研修に使用しながらアップデートさせていくという企業さんもいらっしゃいます。
[小賀]
サービスを使った研修は画一的になりがちですが、自社のドメインに合わせて柔軟にやっていくことにより、研修効果も上がるということですね。