BASICは初心者向けのプログラミング言語とも言われており、プログラミング教育や入門者向けとして扱われていることもあるプログラミング言語です。
1970年代から利用されてきたプログラミング言語ですが、メーカーごとに独自開発されたこともあり仕様の統一がされていないという時期がありました。
そのため当初のBASICはメーカーの機種によって仕様を変える必要があり、効率的な開発を目指すためには課題を抱えているプログラミング言語でもありました。
またMicrosoftが開発したBASICをベースにしたプログラミング言語としてはVisual BASICがあります。
Visual BASICは同社が提供するWindowsをOSとしたPCなど、様々な製品にも組み込まれています。
その他富士通のパソコンの一部シリーズではF-BASIC、NECのパソコンの一部シリーズではN-BASICとして様々なパソコンでBASICは組み込まれています。
ではそんなBASICはどのような歴史を経て発展したプログラミング言語なのでしょうか。
本記事ではプログラミング言語BASICの歴史について紹介していきます。
BASICの誕生について
BASICが誕生したのは、1964年。ジョン・ジョージ・ケメニーとトーマス・カーツによって考案されました。
ジョン・ジョージ・ケメニーは、ユダヤ系アメリカ人であり数学者。
陸軍に入隊していた時期もあり原爆研究ではコンピュータ運用の技術で貢献したという実績があります。
またアインシュタインの助手を努めた経験もあるため当時の米国の研究者として輝かしい経歴を持った人物だといえるでしょう。
そしてBASICはその扱やすさからプログラミング教育のハードルを下げることにも影響したと言われています。
このような教育への影響を考慮するとジョン・ジョージ・ケメニーは教育者としてプログラミング言語の発展にも多大な貢献した人物であることが分かります。
では共同開発者のトーマス・カーツとはどのような人物だったのでしょうか。
トーマス・カーツは米国のダートマス大学の在学中にジョン・ジョージ・ケメニーと出会います。
そして二人はタイムシェアリングシステムの開発に取り組みます。
タイムシェアリングシステムとは今では一般的になっている一台のコンピュータに複数の端末からユーザがアクセスできる仕組みのこと。
コンピュータが各端末からアクセスした情報を細かい時系列に分けて処理するため、それぞれのユーザは自分だけの端末を操作しているような感覚でコンピュータを利用することができます。
このタイムシェアリングの開発を通して誕生したのがBASICです。
このような背景がありトーマス・カーツはジョン・ジョージ・ケメニーとの共同開発者としてその存在を知られるようになりました。
またBASICはタイムシェアリングシステムで利用できるのは当然のこととして、変数宣言を省略できるという特徴もありました。
このような特徴がプログラミング入門者でも比較的取り扱いやすく、当初は教育用のプログラミング言語として注目を集めました。
BASICの黎明期について(1960年代)
BASICは前述の通り1964年代に開発されたプログラミング言語ですが、当時のコンピュータはまだまだ多くの人にとって馴染みがないものでした。
そのため1960年代はコンピュータの黎明期でありBASICにとっても黎明期だったといえるでしょう。
また1960年の国内はようやく情報サービスが産業として成立した時期です。
しかし当時は現在のように個人がパソコンを持つという状況とは程遠く、一つの大きなパソコンを複数のユーザがアクセスして利用するというのが一般的でした。
またその用途も現在と比較すれば限定的であり、大企業や政府機関による利用が主となっていました。
その一方で1960年代当時の日本は高度経済成長期であり、国内のあらゆる産業が発展を遂げていました。
その経済成長率は10%を越えており、2019年現在からは考えられない成長率だったといえるでしょう。
そして1964年には国内で初のオリンピックが開催されています。
日本は女子バレーボールで「東洋の魔女」と称されるなど様々な結果を残し、スポーツの分野でも世界的に注目を集めました。
そんな華やかな1960年代とは裏腹に国内の情報サービス産業はまだまだ黎明期でしたが、BASICは1970年代後半からは徐々に利用される機会が増えていきます。
BASICの成長期(1970年代後半〜1990年代前半)

BASICの成長期として注目すべき時期は主に1970年代後半〜1990年代前半にかけてです。
特に1980年代にはスタンドアロンBASICが開発され多くのパソコンに内蔵されました。
スタンドアロンBASICとはBASICプログラミング環境を意味しますがOSを必要しないという特徴があります。
BASIC環境を利用すればデータの入出力管理など、パソコンの主となる機能を担うことができたためです。
そしてスタンドアロンBASICは内蔵されるだけでなく、フロッピーディスクから起動するという操作をすることもできました。
またプログラミング実行環境を支える技術として、スタンドアロンBASICは当時多くのコンピュータに取り入れられました。
その理由は当時のパソコンでは主記憶容量の課題などがあり現在のようなOSを動作させることはできなかったことが関係しています。
また同時期にマイクロソフト社によるMicrosoft BASICというBASICの処理系が開発されています。
高機能な処理系が開発されることによってプログラミング環境が整うことにもつながっていったと考えることができます。
Microsoft BASICのコンパイラ系としては、Microsoft BASIC CompIlerやQuickBASICがあります。
そして1991年からはMicrosoft Visual BASICが提供されています。
Microsoft Visual BASICはVBと呼ばれ開発環境はその後2008年まで提供されました。
さらにマイクロソフト社は同時期にBASICから派生させたプログラミング言語であるVisual BÀSICを開発しています。
Visual BASICはマイクロソフトのアプリケーションのマクロ環境としても実装されているため、Windowsユーザにとっては馴染みやすいプログラミング言語でもあるといえるでしょう。
そして1980年代のIT業界で注目すべき変化の一つに、TCP/IPが標準化されたことがあります。
これによりネットワークを世界規模で接続することが可能になり、徐々にインターネットという言葉が使われるようになっていきました。
現在では当たり前に存在しているインターネットサービス・プロバイダが増え始めたのも1980年代です。
BASICの現在(2019年)
2019年現在のBASICは他にも様々なプログラミング言語が開発されたこともあり、主流のプログラミング言語ではありません。
しかし開発から数十年が経過した現在ではBASICから派生した様々なプログラミング言語が利用されています。
そのうちの一つが、マイクロソフト社の開発したVisual BASIC .NETです。
Windows用のプログラミング言語ではありますが、初心者でも学びやすいという点はBASICと共通しており、2019年現在でも一定の人気を誇っています。
またVisual BASIC .NETは「.NET Framework」上で動作するだけでなくオブジェクト指向も取り入れています。
このようにBASICから派生していったプログラミング言語は現在でも活用されて続けており、プログラミング言語の歴史から見ても存在感があるプログラミング言語だといえるでしょう。
まとめ
BASICは1964年、ジョン・ジョージ・ケメニーとトーマス・カーツによって誕生しました。
コンピュータが一部の研究機関でしか使われていなかった時代に、「誰でも簡単にプログラミングを学べる言語を」という理念のもと開発されたのがBASICです。
1960年代はまだ黎明期でしたが、1970年代後半〜1990年代前半にかけて家庭用パソコンの普及とともに急速に広まり、多くの機種に標準搭載されました。特に、Microsoft BASICやVisual BASICの登場は、BASICを実用的な開発言語として普及させる大きな転機となりました。
その後、Visual BASIC .NETなど派生言語が登場し、BASICの思想は今なお受け継がれています。現在では主流のプログラミング言語ではないものの、「わかりやすく学びやすい」設計思想は、Pythonなど現代の教育向け言語にも影響を与えています。
BASICの歴史を学ぶことは、単なる過去の技術を知るだけでなく、プログラミング教育やIT発展の背景を理解するうえでも価値があります。これから新しい言語を学ぶ人にとっても、BASICが築いた「学びやすさ」の思想は、今なお重要なヒントを与えてくれるでしょう。
