プロローグ
全世界で3300万DLを突破した『ブレイブ フロンティア』で総監督を務めた早貸氏が率いる株式会社アイディス。 設立から2年、自社開発のゲームは1本もリリースされていない。
会社は何をしているのか、社員は何をしているのか、沈黙しているワケは、多くの好奇心を刺激されたままプロデュース部部長の篠子裕さんに話を伺った。
会社について、現在のお仕事について教えてください
主にスマートフォン向けゲームの開発を行っています。私はプランナー、プロデューサー、ディレクター、PR、デバッグ、カスタマーサポートを纏める部署の上長をしています。
他にも弊社RPG(現在製作中)のメインシナリオや、弊社代表の早貸が監修を行った『グランドサマナーズ』の一部シナリオも書いています。フレーバーテキストと呼ばれる各ユニットやキャラクターに書かれている説明文も担当しました。
けっこうなボリュームになりますが、何でも任せてくれると申しますか、弊社の特長のひとつに色々なことができる、チャレンジしやすい環境があり、まさに今自分が置かれている環境がそれですね。ある意味、とてもやりがいを感じます(笑)。
入社を決めたきっかけは何ですか
代表の早貸とは違う職場だったのですが、ある仕事で一緒になり、そこで意気投合したのがきっかけですね。それから早貸が会社を作るという話があって迷わず付いていきました。
元々、一緒に面白いゲームを作りたかったし、儲かる儲からないというより面白いものを作りたいところが根底にありましたから。最近入ったメンバーも面白いものを作りたいという人が多く、同じ気持ちの人が多いのも縁を感じますね。
スマートフォンのゲームに特化しているのはなぜですか
ハードは特に決めていません。気にしているのは一番ユーザーさんが多いところですね。作ったゲームをより多くの人に遊んでもらいたいからです。
全世界で見るとスマートフォンって本当に多くの人が持っていますよね。僕たちが作ったゲームがより多くの人に遊んでもらえるハードが、たまたまスマートフォンだったというだけです。
他にも運用型のゲームだと長く遊んでもらえるところも魅力のひとつです。課金システムがどうだとか、その辺はあまり気にせず、ゲームとして面白いものを作りたいなと思っています。
社員のみなさんはどんな方が多いですか
ゲーム好きが集まっていますね。アニメ、マンガとかエンタメコンテンツが好きで自分から好んで面白いものを作ろうとする人です。自爆型っていいますか(笑)。
「自爆」とは、スケジュールが1週間あったとして、そのうち3日で終わったとしても、その途中でより良いものが思い浮かんでしまったら、全部壊して自分でやり直しちゃうんですね、自爆ですよ。
そうなるとスケジュールは変わらないので結果、時間がかかってしまう、きつくなってしまう。それでも面白いものを作る、作りたい、上から言われたものを作るよりも、自分でこうしたいという意思を持つ人が多いですね。
だから上長としては困ることが多く「スケジュールどうするの?」「本当にその修正は必要なの?」とか、逆に止める側にまわってしまいますが、相手が本気で面白くしようとする気持ちを感じると止めきれないんですよね。
本当にゲームを作るのが好きな人が多く集まっているんだなと思います。
そこで意見の衝突とかトラブルはありますか
もちろん作りたいものはそれぞれ違うので衝突は起こります。「なんでそんな変な仕様なんだ」「もっとこうしたほうが面白いだろう、こっちの方がいいよ」と、当然そういう言い合いは出てきます。
ゲームって最後は好みの部分になってくるので、そこは代表であり作品の総監督でもある早貸に判断を委ねます。それがあるので、コンセプトからブレることなく開発が行えると考えているからです。
ですが全てを代表の一存で決めることはないです。通る通らないは別にして、入社初日でも意見や企画を出せるというのも弊社の社風のひとつだと思います。
社員の方、部下で誇れるところを教えてもらえますか
私が思いつかないアイデアや「そうきたか!」と私の出した指示に対して全然違うものを出して、そっちの方が面白い時ですね。
そうするともう、悔しいけど凄いというか、イラストとかも指示通りじゃなく「こうしちゃいました」といいつつ、意図を組んで向こう側というか想像を超えるものを出してくるとゾクゾクしますね。
そういえば弊社の現場目標に「主体性を持って想像力を超えていこう」というものがありますが、そんな理念通りに行動している人も増えてきました。ですので、指示を出す側の私としてはだいぶ楽になってきました。
指示の出し方がシンプルで済むからです。想像を超えたものを出してくるというのは、ある意味チャレンジなので勇気がないとできません。
指示通り作ればすぐに終わるものを、無茶なことをしてくるので。そうなるともちろんダメ出しになることもあります。
でも自分の中ではこっちのほうがいいと思ってチャレンジしてくれるのは、みんなよく頑張るなと思いますよ。愛情を持って携わっているというのでしょうか。
モチベーションを保つためにされている施策は?
仕様書が否定されたり、スケジュールが厳しすぎたり、そういうところでモチベーションが下がる人は多いですね。そんな時は、各上長が集まるマネージャー会議でモチベーションが下がっている人を他部署からフォローするようにしています。
他部署側からフォローすることは同じ部署でフォローするよりも効果があると考えています。
他にもデザイナー、プログラマー、みなさんゲーム好きなのでプランナーに言いたいこともありますし、逆にプランナー側も絵(デザイナー)やプログラマーに言いたいことがあるので、そんな時はランチでもいいですし、ちょっとした雑談でもいいので機会を設けるようにしています。
まだ手探り段階ですが、弱っている人を見かけたら対応するようにしていきたいです。
小さいですけど年末などにゲーム大会をすることもあります。ミニファミコンで代表含めて対戦もしました。勝てばゲーム会社なので報酬はゲーム機やゲームソフトをプレゼントしたりとかですね。
どんな方の応募をお待ちしていますか
ゲーム業界にいた方のほうがやりやすいと思いますが、未経験でも映画やアニメ、漫画などのエンタメ業界にいらっしゃった方もぜひご検討いただきたいです。実際トップクリエイター(ゲーム)でも映画など別の業界からゲーム業界に入って活躍している方もいらっしゃいますので。
ただ、プログラマーやデザイナーは専門的な知識がより必要になる場面が多いので、未経験の方だと厳しいかもしれません。とはいえ、一番重要なのは「ゲームを作りたい」という情熱だと思いますので、ぜひご興味がある方のご応募をお待ちしております。
最後に今後の目標をお聞かせください
弊社として一番の目標は「世界一遊ばれるゲームを作る」ことです。これは早貸の悲願でもありますし、常にそこを目指しています。
設立から2年経ちますがまだ1本もリリースしていません。ですが今年こそ、自社開発の作品をリリースできればと開発を進めています。かなりの大型タイトルとなりますので、楽しみにしていただければと。
今は世界で戦える日本発のタイトルは少なくなってきていますが、「やっぱり日本のゲームは面白い」と世界中の方に思ってもらえるタイトルを作り出せるよう、社員一同頑張ります。
エピローグ
「世界一遊ばれるゲームを作る」これが2年の沈黙の理由だったのではないか。 国内はもちろん世界を視野に入れた、あまりに大きな目標を自らに課していたからであろう。妥協を許さず、篠子さんの言う「自爆」と呼ばれる過酷な作業を繰り返しながら、自分たちが納得したゲームを楽しみながら作る姿が容易に浮かぶ。インタビューを終え「ここはクリエイターの天国ではないか」と思った。
プロフィール:篠子裕さん 2016年の1月に株式会社アイディスが設立後、同年4月に同社へ入社。代表の早貸氏との親交は長く深い。肩書きはコンテンツ事業部、プロデュース部の部長だが、仕事の範囲は広く企画からディレクター果てはシナリオライティングまでこなす。元々はゲーム攻略本などの編集者でもあった。