転職は誰にとっても人生の大きな転換期です。しかし、20代後半という時期での転職は、他の年齢での転職よりも、さらに大きな意味を持つと言えます。

なぜならば、20代後半は担当業務の仕事や会社の全体像をおおむね理解し、社会での扱いも、若手から中堅へと変わってくる時期です。キャリアを根本的に見直す場合、最後のチャンスとなる可能性もあるタイミングだからです。

そこで今回は、20代後半のエンジニアの転職について、見ていきたいと思います。

20代後半のエンジニア 強みを整理

冒頭に書いた通り、20代後半というのは、一つ節目となる時期です。

浪人や留年がなく、ストレートで入学・卒業できていれば、学部卒だと22歳、院卒の方は24歳で新卒として入社します。20代後半というのは、ちょうど入社から3年~5年程度経った時期なのです。

新卒採用から3年~5年程度経つと、社内での扱いも若手から中堅へと変わりつつあります。また、就職市場においても、いわゆる第二新卒枠での応募が難しくなります。つまり、採用側企業は、社会人としての基礎能力は備わっていて、これまで担っていた業務についての知識や、かかわってきた業界の一般的な常識があることを期待しています。

もっと端的に言えば、ほぼ100%「ポテンシャル採用」といえる20代中盤までの新卒採用や第二新卒採用と、「実績」も意識され始める20代後半の採用は、明確に“採用基準が違う”のです。

ただし同時に30代以上の転職活動とも異なり、採用側企業は「まだ20代」という目で見ています。「実績」主義になりつつあるものの、まだまだ「ポテンシャル採用」が色濃いという側面もあります。

極端な話、面接官の「こういうスキルがないと厳しいよ」という問いかけに対して、「このような経験があるので、まったくそのスキルがない、とは思いません。ただし、足りない部分があるのも確かなので、それについては採用後、現場で習得します」が、まだ許されるのが20代後半です。そういう意味では、20代後半の転職活動は、ほかの時期の転職活動と明確に性質が違います。

さて、改めて、転職活動時に意識したい、20歳後半の強みについて、整理すると、以下のポイントが挙げられます。

  • ①担当業務について、おおむね一人前。新人の後輩に指導することもできる。
  • ②業界人として、業界の知識や仕事の進め方を一通り知っている。
  • ③20代の若さと勢いがある。
  • ④転職活動も含めて、ステップアップを目指す、向上心を持っている。
  • 上記の4つを軸に、プラスαの自分のカラーを足すと、良い自己アピールを作ることができるかと思います。

20代後半からの転職 どの業種・職種が良いか

エンジニアの方が20代後半で転職する場合、システム開発に関わりたくない、という思いがなければ、基本的にはIT業界の他社にエンジニアまたは営業職、あるいは情報システムのコンサルタント業を行っている会社への転職が一般的です。

20代後半は担当業務について、一通り経験して、おおむね一人でできるようになったと言えども、踏んだ場数は少なく、まだまだ経験不足です。エンジニアやIT業界人として、さらに経験を積むための“ステップアップのための転職”という意識で転職先を考えた方が良いでしょう。

エンジニアの転職コースとして、IT企業から、非IT企業の情報システム部門に転職する、というコースもあります。しかし、20代後半では、まだまだ有力なポジションをもらえる訳ではなく、最悪「一人情シス」と言われるような、“少数のIT担当者が様々な要求に忙殺される”現場に担当者として放り込まれて、かえってつらい思いをすることもあります。

最終的には非IT企業の情報システム部門への転職を考えている方も、いったんは、IT企業、特にSIerで法人向けシステム開発の経験を積んでおくことを、おすすめします。SIerに勤務しておくと、経験を積めるだけでなく、様々な会社とコネができます。

実際、SIerでプロジェクトマネージャーや上級SEとしてクライアントの担当者と直接やり取りしていたメンバーが、いつの間にか、その会社に転職していた、ということが、しばしば発生します。

転職を考えている20代後半のエンジニアの方の中には、自分は手を動かすよりも、説明やクライアントとの折衝の方が向いているかもしれない、と考えている方もいるかもしれません。そういう方は、エンジニアからIT企業の営業やコンサルタントへとキャリアチェンジを目指すのもありです。

ちなみにですが、Web系からSIerへの転職を考えている方に、あるWeb系エンジニアに言われた言葉を紹介します。

その人曰く「SIerからWeb系へのエンジニアとしての転職は、20代後半が限界」だそうです。理由としては「Web系とSIerでは求められる技術が違うのは当然として、それ以上にマインドセットが全く異なる。20代でSIerに染まった人が30過ぎてWeb系に来ても、馴染めない。そもそも30代になって、やっと転職してくるような、動きが鈍い人ではWeb系のスピード感についていけない」そうです。

20代後半からの理想のキャリアマップとは?

20代後半からの理想のキャリアマップとは?

エンジニアのキャリアルートにはおおむね二つに分かれます。一つは現場のエンジニアとしての能力を高め、その分野のスペシャリストになる道です。もう一つは、現場のエンジニアを束ね、クライアントと折衝する管理の仕事です。

サラリーマンエンジニアの場合、30代半ばくらいからスペシャリストや課長代理などの役職に任命されるメンバーが出てくるようになります。

20代後半は、エンジニアとしての基礎部分を身に着けたことで、自分の強み弱みを正しく理解できるようになる時期です。その気付きをベースに、自分の目指す姿を決めましょう。そして、現状、なにが足りていて、なにが足りないのかを意識し、きたる30代に備えるべきです。

例えば、プロジェクトマネージャーを含めて管理の方に進みたいというのであれば、上流工程に関われるような職場、現場に移るべきです。逆に現場のエンジニアとしてスキルを高めたいというのであれば、ハイスペックなエンジニアが集まる現場に飛び込んでみるのも良いでしょう。

20代後半のエンジニア 転職とフリーランスどちらが良いか?

転職とフリーランスどちらが良いかは、どちらの道を選んでも、良くなる可能性が秘めているため、その人の価値観次第です。

フリーランスというと「仕事がない時もあるかもしれない」という恐怖心を抱く方もいるかもしれません。しかし、“3年~5年IT企業にエンジニアとして勤務していた20代後半のフリーランス”というのは、人材市場で高く評価されます。若くて体力があり、しかも業界経験がある、ということで、クライアントからみると、20代後半の脱サラエンジニアは現場作業担当者として理想的な存在です。

また、サラリーマンエンジニアの場合、管理の仕事に回されて、現場から離れていく可能性もあります。現場のエンジニアとして生きていきたいという方は、転職よりフリーランスになる方が良いでしょう。

ただし、現場作業担当者の仕事があるからといって、現場作業担当者からレベルアップすることなく、サラリーマンエンジニアでいうところの管理者やスペシャリストに相当する部分を担う能力を身に着けないまま、30代、40代と突入してしまうと、“年齢の割に低スキルな中年フリーランス”になってしまいます。

では、現場作業者担当者から管理者やスペシャリストに相当する人たちにレベルアップするために必要なスキルとはなにかというと、ずばり上流工程スキルです。クライアントなどと折衝して要件を固めたり、決まった要件に従って、システム設計を行うスキルです。

20代のうちは「設計に従って言われたとおりにプログラミングを組みました」が許されるけれど、40歳にもなって、「言われた通りのプログラミングしかできません」はイマイチというわけです。

まとめ:20代後半はキャリア選択の分水嶺

何度も繰り返している通り、20代後半は新卒採用された方が、ちょうど入社から3年~5年程度経って、若手から中堅へと社内の扱いが代わりつつある時期です。また来るべき30代に向けて、キャリアを考え直すべき時期でもあります。

非常に重要な節目の時期ですので、転職するにしても、フリーランスへ転向するにしても、はたまた、やっぱり会社に残ることにしても、決断は慎重かつ大胆に、悔いのないものにしていただきたいと思います。

今すぐシェアしよう!
今すぐシェアしよう!