CCIEとは?
ネットワーク分野で事実上のデファクトスタンダードとなっているアメリカCISCO社が実施しているベンダー資格の一つ、CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)です。
内容について詳しく見ていく前に、CCIE の概要を掴んでもらうために、まずはCISCOの資格試験の体系から説明したいと思います。
CISCOの資格試験はカテゴリーとレベルという考え方があります。
CISCOの資格試験 カテゴリーについて
まず、カテゴリーですが、以下の九つが用意されています。
- Routing and Switching:LANに関するスキルを問うカテゴリー
- Security:ネットワークセキュリティに関するスキルを問うカテゴリー
- Collaboration:IP電話、TV会議システムなどのスキルを問うカテゴリー
- Cloud:クラウドネットワークのスキルを問うカテゴリー
- Industrial:産業ネットワークのスキルを問うカテゴリー
- Data Center:データセンターネットワークのスキルを問うカテゴリー
- Service Provider:キャリアネットワークのスキルを問うカテゴリー
- Wireless:ワイヤレスネットワークのスキルを問うカテゴリー
- Design:ネットワーク設計のスキルを問うカテゴリー
「LAN? IP電話?」というレベルの方は、“Routing and Switching”が一番基礎となるネットワークの知識を問われるカテゴリーで、他は“Routing and Switching”を基礎として、特定分野に特化したカテゴリーだと思っていただければよいかと思います。
CISCOの資格試験 レベルについて
そして、もう一つのレベルですが、その名前の通り難易度を意味します。CISCOの試験は下から、エントリー(Entry)、アソシエーション(Associate)、プロフェッショナル(Professional)、エキスパート(Expert)、そしてアーキテクト(Architect)と5階層になっています。
CCIEはネットワークエンジニアにとって最高峰の資格
今回のテーマである、CCIEのEは『ExpertのE』です。その名前の通り、エキスパートレベルに属する試験です。ということは、上から二番目の試験に見えますが、実はそうではありません。エキスパートより上の、アーキテクトに属する試験はDesignカテゴリー(ネットワーク設計)のCCArしかありません。他のカテゴリーにおいては最高難易度であり、CCArは質的にも保有者的にも特殊なため、実質的には、ネットワークエンジニアにとって最高峰の資格とみなされています。
なお、“Cloud”と“Industrial”にはCCIEがありません。
CCIEの難易度は?
CCIEの難易度は、日本の国家資格であるネットワークスペシャリストよりはるかに難易度が高く、2年ごとに更新が必要なことから、ネットワーク関連ではもちろん、IT業界の資格の中でも最高峰の一つとされています。
2010年までの保有者数が明らかにされていたのですが、その時点で日本国内には約1100人、世界で見ても2万人ちょっとでした。
CCIEを取得するためには、筆記試験とラボ試験と呼ばれる実技試験の二科目をクリアする必要があります。試験時間は100問で2時間半、そして、ラボ試験は驚異の8時間です。純粋なネットワークエンジニアとしての知識だけでなく、集中力、そして体力が必要になります。
いずれの試験にしても、トラブルシューティング対応に関する設問なども含まれており、「基礎的なCISCO機器の設定ができる」程度のスキルしかない人では、合格はまず不可能です。CCIEを実施するCISCO自身、受験者は7年以上の実務経験を持つことが望ましいと定義しています。
さらにCCIEの厄介なところは、受験可能言語は英語のみです。
interfaceやMACなど、アルファベットのまま普通に日本人エンジニアも使っているワードが多いので、まったく英語が苦手という方でも、ぼんやりと設問の意味が理解できる問題もあるでしょう。とはいえ、設問に書かれたネットワーク要件や選択肢の意味を完璧に理解できずに、問題を解いて回答するのは、運試しと変らないと言えます。
CCIEを取得するために必要とされる勉強時間は?
上でも触れましたが、CCIEは7年以上の実務経験がある方をターゲットにした試験です。すでにそれ以上の実務経験があり、英語も大得意という方であればともかく、基本的には、士業のように、数年スパンの学習が必要になる試験です。
ある程度の経験がある方でも、何回か受験してやっと合格できたという方も多いです。学習時間にすると1000時間、2000時間、それ以上という方が少なくありません。
特に、VLANやPATというネットワークエンジニアにとって当たり前な言葉の意味が分からないエンジニア未経験の方、業界の浅い方、業界が長くてもアプリ開発がメインでインフラに詳しくない方が、いきなりCCIEに挑むのは、もはや無謀と言えます。
これもすでにご説明していますが、CISCOの資格試験はレベル別に分かれています。ORACLEの実施するオラクルマスターとは違い、CISCOでは上位試験の受験資格として下位の試験を合格していることが必須という訳ではありません。つまり、最初からCCIEを受験することが可能なのです。
しかし、せっかくレベル別に分類されているので、下位のレベルからステップアップしていくのが一般的です。
なお、各資格試験の平均的な勉強時間ですが、概ね、以下くらいが目安になるか思います。
- CCENT:半年程度ネットワークの経験がある方なら二週間(15時間~)、ない方でも二か月(50時間~)
- CCNA:一年程度ネットワークの経験がある方なら二か月(50時間~)、ない方だと四ヶ月(100時間~)
- CCNP:三年程度ネットワークの経験がある方で四ヶ月(100時間~)、ない方が受けることはお勧めしない。
補足しておくと、CCNAは現在、ICND1とICND2に分けられており、ICND1とICND2を両方合格すると、CCNAに合格したことになります。
ちなみに、もともとCCNAがCISCOの資格試験で一番レベルが低かったのですが、バージョンアップの度に、出題範囲の拡大・高度化しているため、より下位のCCENTができた、という経緯があります。対して、CCNPはネットワークのプロフェッショナルが受ける試験であり。初心者がいきなり受けて良い試験ではないのです。
また、上記の「ネットワークの経験」とは「CISCO機器の設定経験」と同義です。
CISCOの資格試験では、シミュレーション問題と言われる“テスト環境のようなものが与えられて、機器の設定変更をしていく問題”の配転比率が高くなっていると言われています。シミュレーション問題さえすべて正解すれば、他の知識問題は全滅でも合格する、という噂もあります。
そして重要なのが、ここで設定変更していく機器はCISCO製品のため、CISCO製ではない機器でネットワーク経験を積んでいると、コマンドの違いに苦労する可能性が高いです。特に、日本企業でよく使われているヤマハのルータ(RTXシリーズ)は、設定を確認するためのコマンド(showコマンド)もCISCOと大きく違います。わざとしているのでは?と戦略性すら感じるくらいに違います。
たいして、NECのIXルータやヒューレットパッカードのArubaスイッチ、JuniperのEXスイッチなどは、まったく同じという訳ではないですが、同じコマンドも多いです。だからこそ、「show ip route? show route? どっちだっけ?」といった罠にはまりやすいというところもあります。
CCIEのメリットは?
転職市場で高い価値のある資格ですので、非常に高年収が期待できます。
求人サイトなどで、CCIE所有者に提示される年収は一般的に500万円~1,000万円です。外資系であれば1500万円に届くこともあります。
さらに、CCIE保有者はネットワークエンジニアの最高峰とみなされ、様々なところから声がかかります。そうした繋がりから、単純にダブルワークやフリーランスとして活躍するだけでなく、講演会やセミナーなどの講師、さらには技術解説サイトの運営や書籍の執筆といった形で副収入を得ていたり、業界の著名人となる方も少なくありません。
なお、CCIEに限らずCISCOの資格は有効期限があります。有効期限までに同じ資格か、それ以上の資格をクリアしていない、有効期限日をもって、その資格は失効します。このように定期的に知識をブラッシュアップする必要があるので、希少価値が高く、真のエキスパートのための資格として評価されているのです。
まとめ:CCIEはネットワークエンジニアの頂点
繰り返しになりますが、CCIEはCISCO資格試験の最高峰であり、非常に難易度が高く、ネットワーク初心者が最初に受ける試験としては、まったく相応しくありません。経験者であっても、ハードルが高い試験です。
ネットワークの分野で活躍したい方、すでに活躍している方すべてが、究極の目標として、意識するべき資格です。