MaaS事業を通じて「新たな移動方法」を創出している株式会社NearMe。2020年には約5億円の資金調達を完了し、累計調達額は設立から3年で約8億円に。今回は、そんな成長真っただ中のスタートアップでCTOをされている細田さんにインタビューを実施しました。好奇心の赴くままにプログラミングに没頭されてきた細田さんのご経験や考え方は、技術力をつけたい、成長したいという多くの方の参考になること間違いなしです!
「どうなってるの?」素朴な疑問がプログラミングに触れるキッカケに
―初めてプログラミングに触れたのはいつですか?
中学生の時ですね。画面上でグリグリと動く3Dの線を見て、「どうやって動いているんだろう?」と興味を持ったのを覚えています。その後、書店でプログラミングの本を購入し、独学しました。それから、プログラミングはずっとやっていて、大学時代はプログラミングのバイトもしていましたね。
―中学生のころからエンジニアになりたいと思っていたのですか?
いえ、当時は研究者になりたいと思っていました。実際に大学院で脳科学を学び、博士課程を修了しました。しかし、ちょうどそのタイミングで知人から社員数名のスタートアップに入社しないかと誘われ、IT業界に飛び込みました。もちろん研究はおもしろかったのですが、日進月歩で発展するIT業界の魅力に触れ、本格的にエンジニアとしてキャリアを歩んでいく決意をしました。研究員時代に機械学習を学んでいたこともあり、エンジニアとしての仕事に活かせる部分もありました。
プロダクトアウトからマーケットイン思考への変遷
―どのようにエンジニアとしてのキャリアを歩んできましたか?
1社目では当初、私を含めて数人しかエンジニアがいませんでした。エンジニアリングを教えてくれる人もいなかったので、自分でドキュメントや参考書を見て学びました。フレームワークがあれば、内部でどのような処理が行われているか一通り確認していましたね。そんなこんなでエンジニアリングに没頭していると、私が退職する頃にはエンジニアだけでも数十人の企業規模になっていました。その後、NearMeにCTOとしてジョインしました。マネジメントだけではなく、今でも手を動かして開発に携わっています。
―最初のキャリアと比べて、成長したなと思えることはありますか?
プロダクトアウトからマーケットインの思考になりました。技術力さえあればなんとかなると思っていたのですが、事業として成立させるためにはマーケットインで物事を考えなければいけないと学びました。「マーケットは何を求めているのか?そこに我々はどんな価値を提供できるか?」ということを考え、実行することが重要だと思います。
―マーケットイン思考に変わるキッカケがあったのでしょうか?
ピンポイントでこれというキッカケはないのですが、プロダクトを開発していくうちに、徐々に学んでいきました。当初は、新しい機能を開発してもユーザーに全く使ってもらえないことがありました。「ユーザーにとって本当に必要な機能は何?」という視点が抜けていたんですね。そういった課題を解決するべく試行錯誤を繰り返していくうちに、徐々にマーケットイン思考が身についていきました。今ではビジネスサイドと密にコミュニケーションを取ったうえで、プロダクトを開発しています。その際も、ビジネスサイドの要望を全て鵜呑みにするのではなく、「その機能は本当に必要か?」と本質的な部分を考えて判断しています。
多すぎず、少なすぎないコミュニケーションで最大限の成果を
―エンジニアリング組織についてお伺いしたいと思います。メンバーが増える中、チーミングなど意識されたことはありますか?
技術の情報発信を心がけていました。技術好きな方が多かったので、みんなで最新の情報を共有してスキルアップしていこうという環境を作り上げました。教育面においては、主体的に学んで成長できるメンバーが多かったので時間をかけたということはあまりなかったですね。小さい会社だったので一人ひとり教える時間がなく、採用の際には「自分でどれだけ勉強できるか」を重要視していました。
―NearMeでCTOとして意識されていることはありますか?
自律的に仕事を進めつつ、適切なコミュニケーションをとることを意識しています。コロナ禍以降は、リモートワークが中心になっておりますが、ミーティングは週1回は実施しています。
―多くの企業では雑談タイムや、毎日の朝会などコミュニケーションの量を増やすことで質を維持する試みをされていますが、定例は週1度だけですか?
決して、コミュニケーションを疎かにしているわけではなく、むしろ重要視しています。しかし、適切な量のコミュニケーションで成果を出せれば生産的なアウトプットとなります。現在当社では、フルリモートでコアタイムも設けていませんが、業務に支障は全く出ておりません。コミュニケーション頻度を落としても仕事が回る理由は、
・各メンバーが自走して業務をこなせる
・小さなことでも報連相がきっちりできる
の2点だと思っています。メンバーへの信頼があるので、決まりや規制は必要ないんです。また、最近オフィスを移転したのですが、リアルの場でコニュニケーションが円滑になることを重視しました。
成長エンジンは湧いて出てくる「好奇心」
―エンジニアとして成長するために大切なことは何だと考えますか?
いかに好奇心を持って仕事ができるかだと思います。私が今まで見てきたエンジニアの中では、好奇心が強い人は誰かに教えられなくても勝手に学んで成長していっていました。仕事としてお金を稼ぐことをモチベーションにするタイプもいると思いますが、私自身は好奇心によって深堀りすることで知識、スキルが身につき、いいものを創ることができると思っています。
―エンジニアさんは好奇心が強い方が多いと思うのですが、好奇心は努力して養われるものだと思いますか?
こればかりは分からないですが、ある程度先天的に備わっているように思います。とは言うものの、好奇心がくすぐられるポイントは人によって違うので、各々が興味がある分野で活躍することが理想じゃないでしょうか。当社のエンジニアは技術に対する好奇心が強いので、一人ひとりが「おもしろい」と思える領域をなるべく担当してもらうようにしています。結果的に、この方法が一番成果が出るんですよね。
プログラミングスキルは当たり前、そこに何を掛け算させるか
―スキルの部分でいうと、エンジニアとして今後求められるものは何だと思いますか?
プログラミング以外の「何か」だと思います。つまり、「プログラミングスキル×OO(別の何か)」というスキルの掛け算ができるエンジニアですね。これからは、AIやノーコードでパタン化されたプログラムは簡単に作れる時代になるので、専門性がない同じようなプログラミングだけに始終するエンジニアの仕事は奪われてしまう可能性があるのではないでしょうか。
―“OO” には、具体的に何を当てはめたら良いのでしょうか?
自分が自信を持って得意だと言えるのであれば、何でも良いと思います。変化が激しいこの時代において、どの領域が当たるのか予想することは困難です。一方で、あらゆることがエンジニアリングに繋がるという側面もあります。そのため、自分の「好奇心」がくすぐられる分野で専門性を身につけるのが良いのではないでしょうか。「好奇心」を持てる分野であれば、とことん突き詰められるはずです。私自身、興味があってやっていた脳科学の研究で得た機械学習などのスキルが今の仕事に活きています。
時代の変化に負けない「突き抜けたサービス」をともに作っていける仲間を募集
―CTOとしてどのようなエンジニアと働きたいですか?
プロダクトをある程度の完成度まで作って満足するのではなく、さらにスケールさせるためにはどうすれば良いかを考えられるエンジニアですね。私自身も、ある程度のレベルまでプロダクトを作れる感覚にはなったのですが、時代の変化に負けず突き抜けたものへと育てるところは今後の挑戦です。単に機能を作るだけでなく、プロダクトをどう成長させるかを様々な視点で考えられる人と働きたいですね。当社のプロダクトは、数理最適化などのAIも扱っているので、そのような分野を追求したい人も面白いと感じていただけるのではないでしょうか。
取材を終えて
細田さんの口から度々出てきた ”好奇心”というワードからは、「好きなことに没頭している人は強い」というメッセージを感じました。エンジニアという、情報が日々アップデートされていく業界で好奇心の赴くままに学び、成長されてきた細田さんがおっしゃるので説得力があります。
変化が激しい現代においても、人の移動はなくなりません。そして、移動には課題が多くなってきています。細田さんの好奇心が、この課題をどのように解決していくのか目が離せません。エンジニアとして将来に悩んでいる方は、自分の中の「好奇心が向く不変的な対象」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。それが「プログラミング×OO」の “OO” に入り、あなたの市場価値を高めてくれるかもしれません。
プロフィール:細田 謙二
株式会社NearMe CTO
Ex. エスキュービズム・テクノロジー、東京大学大学院工学系研究科 工学博士
趣味はゴルフ、バドミントン、プログラミング