転職を考えているけれど、志望動機の書き方に困っているエンジニアの方、あるいはエンジニア志望の方も多いのではないでしょうか?
また、業界未経験の方の場合、志望動機をどう書けば面接官に好印象を残せるか、イメージも湧かないかもしれません。
そこで今回は、エンジニアの方、エンジニア志望の方向けに志望動機の書き方をレクチャーしたいと思います。
エンジニアの志望動機とは?
志望動機はその名の通り、その会社に転職したいと思った理由です。
ただ、一つ勘違いして欲しくないのは「自分本位」で書いてはいけません。ある会社に社員として雇ってもらうというのは、労働契約という法人と個人の契約です。実際に雇用契約書というドキュメントを用意している会社もあると思います。
すでに社会人として一定の経験を積んでいる方からすれば当たり前だと思いますが、“どれほど素晴らしい商品であっても、クライアントが、これコストかけて買っても良いよね”と思わなければ、その商品が買われることはありません。
志望動機やエントリーシートも同じです。企業側のニーズ、つまり見たい観点を意識せずに、ただただ思いつくまま“自分の凄さ自慢”を並べても、なかなか内定に結び付きません。
その前提に立って、改めて志望動機について考えていきましょう。
志望動機で企業、ひいては採用担当が特に意識しているポイントは、一般的には次の三つです。
①業界・会社について理解しているのか?
②転職の理由はなにか?
③論理的な文章が書けるか?
【①業界・会社理解】
極論すると「そもそも、うちのこと分かって志望していますか?」という質問です。
エンジニア志望の方が他業種から転職する場合はもちろんですが、エンジニアの方も意識したいポイントです。特に、SIerからWeb系への移動や、あるいはユーザー企業のIT企画部に応募したときなど、異なる領域への転職の際、“企業は絶対にチェックしている”と考えておいてください。
【②転職理由】
【①業界・会社理解】に問題がないことを前提に、この会社に転職したいと思った理由を確認するものです。
一つ、頭の片隅に置いておきたいのは、「この会社に転職したいと思った理由は?」という質問は、実は「前の会社から転職して出ていきたいと思った理由は?」と聞かれているのと同じです。
ここで聞かれているのは、あくまで志望動機であり、退職理由ではありません。従って、「前の会社を辞めたいと思った理由」を明文的に記載する必要はありません。しかし、面接で退職理由を聞かれた際、整合性のある受け答えができるように意識した方が良いでしょう。
ちなみに、前の会社を辞めたいと思った理由が、あまりに独り善がりであったり、幼稚な場合、“この人、長続きしないタイプだな。せっかく採用しても、また辞めそうだな”と思われて、早い段階で選考から落とされることになります。
【③論理的な文章が書けるか】
普通に志望動機を書くと論理的な文章になるはずです。
そもそも論理的な文章とは、「AとBだから、結論C」と道筋が立てられた文章です。志望動機の場合、「A(業界・会社の特徴)とB(転職の理由)だから、結論C(自分の希望に合った。また御社にとっても求める人材と言える)」とひねりなく素直に当てはめられるのです。それなのに、“イマイチ筋の通っていない志望動機”を書いてくる人は、まず間違いなく、書類落ちします。
同業種からの志望動機と美しいサンプル
すでにお伝えした通り、志望動機の基本的フォーマットは「A(業界・会社の特徴)とB(転職の理由)だから、結論C(自分の希望に合った。また御社にとっても求める人材と言える)」です。
ここでは、そのフォーマットを実際に使って、サンプル文を作ってみましょう。今回は、30代前半・SIerの同業他社への転職希望という想定で300字前後(実際は265字)にて作成します。
いわゆるユーザー系SIerにて、関連会社向けのシステム開発業務に関わってきましたが、常にエンジニアとして最先端技術を身に着けたいと考えており、研究開発に力を入れておられる貴社に応募させて頂きました。特に貴社で進められている人工知能に関するプロジェクトに強い関心を持っております。
前職では、協力会社要員含めて50名ほどの体制で進められたプロジェクトなどで、PM経験をしております。貴社においても、即戦力として活躍できると自負しておりますが、今後、貴社が開発した新たテクノロジーを使ったプロジェクトで、積極的にリードできる人材になりたいと考えています。
ポイントとしては、業務経験が豊富で、さらに、どういうスキルを身に付けたいのか、キャリアプランが明確になっている、という点です。転職した後のキャリアプランを思い浮かべられている志望動機は採用担当に好印象を与えることができます。
異業種からの志望動機と美しいサンプル
続いて、異業種の方向けの志望動機のサンプルです。今回は、20代後半・未経験(現職はアパレル)からWeb業界への転職志望という想定で300字前後(実際は296字)にて作成してみました。
現職ではアパレル業にて接客の仕事をしておりますが、現在の転職活動では、システムエンジニア(SE)職を志望しております。理由としては、接客の仕事をしていて、ECサイトの影響力を痛感することがあると同時に、このように改良すればもっと魅力的なECサイトになるのに、と思うようになりました。そして、自らもECサイトの構築・運営に関わりたいと考え、転職活動をしています。できれば、多くの利用者を獲得している、御社のECサイトである『〇〇』の業務に関わって、実店舗で得た私の知見も活用しながら、さらに利用者が増えるよう貢献したいと思います。
なお、まったくのIT業界未経験者ですが、現在独学でJavaの学習を行っております。
ポイントは二つです。
一つ目としては、IT業界は未経験ですが、その会社のサービスに貢献できる経験・キャリアがあり、もちろん熱意もある、ということが伝えられている、という点です。
未経験歓迎と書いてある企業であっても、まったくキャリア的に繋がりのない業界・会社からの転職は厳しいことが多いです。「IT業界は未経験だけど、御社でも役立つスキルを持っているよ」とアピールすることが絶対に必要です。
二つ目は、スキルが足りないと自覚して努力していることがわかる記述があり、好印象という点です。なお、本当はやっていないのに、やっていると嘘書いたらダメですよ。面接時に、突っ込んだ質問をされてボロが出たら、かえってマイナス印象です。
志望動機の注意点 採用担当はここを見ている
上でも、採用担当者がどういう観点で志望動機を確認しているかお伝えしましたが、ここでは、実際の採用担当者から聞いた、もっと細かなポイントをお教えいたしましょう。
①誤字・脱字はダメ
志望動機に限らず誤字脱字、そして誤変換のある提出資料が多くて、がっかりすることがある、と語る採用担当者は意外と多いです。「就業中の方もいて忙しいのは理解しているので、一筆入魂した手書きである必要はないが、せめて、凡ミスはなくして欲しい」という意見は採用担当者みなさん共通の思いのように感じます。
②“愚痴投稿欄”ではない
「この会社に転職したいと思った理由は?」という質問は、「前の会社から転職して出ていきたいと思った理由は?」と問われているのと同じ、という点はすでにお伝えしましたが、“現職は給与が少ない”、“残業が多い”、“ブラックでやばい”など、「もはや仕事の愚痴に関する自由アンケートを読んでいるのか?」と錯覚するような志望動機も、少なくないそうです。
十中八九、書類落ちするので、注意しましょう。
まとめ:最後はフィーリング
志望動機の書き方について、サイトや書籍、さらには人材コンサルティング的な方から、様々な意見が提示されていますが、最終的にはフィーリングなのかもしれません。
びっくりしたのですが、ある中堅企業の人事部に「あまりに志望動機などの提出されたドキュメントが立派な人は、内定出しても内定辞退される確率が高いので、とりあえず面接するけれど、基本的には内定を出さない」と聞いたこともあります。
このように意外な人事採用戦略もあるので、テクニックは知らないよりも知っている方が良いですが、どういう風に書くと良い評価を受けやすいかなど、表面的なテクニックばかり身に着けるよりも、人間的な魅力・本質的な能力を高めることに力点を置くべきでしょう。