企業が応募者に対して採用面接を行う目的は、応募者の実態を知るためです。
もう少し具体的に言えば、履歴書や経歴書、エントリーシートに記載された内容が本当か否か確認するのと同時に、ドキュメントに書き表しにくい、その人の“人となり”、キャラクターをチェックするのが採用面接です。
一つ勘違いして欲しくないのは、「面接相手をなにがなんでも落としてやろう」と思っている面接官は、(まったくいないとは言わないけれど)基本的にはいません。そもそも、企業は“一緒に働いてくれる人物”を探すために求人情報を出しています。最初から、誰にも内定を出す気がない採用試験は、もはや採用試験とは言えません。
しかし、どのような“人となり”の人物が評価されるのか、そもそも採用面接する担当者はどういうところを知りたいと考えているのか理解しないまま、“刺さらないアピール”を繰り返し、内定がなかなか貰えない、という方も多いのが実情です。
そこで今回は、採用担当者が、どんなところを知りたいと思っているのか、どういうところを知ってもらえれば、採用に近付くかをご紹介いたします。
エンジニアの面接で落ちやすいい人の特徴
アメリカの精神科医であるスマイリー・ブラントンの名言に「私たちは成功よりも失敗から、より多くの知恵を学ぶ」というものがありますが、まずは面接官の印象が悪く、落ちやすい人の特徴をまとめましょう。といっても、どれも当たり前のことです。
- ①履歴書やエントリーシートの記載と釣り合いが取れない。
- ②身だしなみに問題あり。
- ③受け答えがかみ合ってない。長くて要点が分からない。
“①履歴書やエントリーシートの記載と釣り合いが取れない。”は説明不要ですよね。
CISCO製のネットワーク機器を触ったことがある、と履歴書には書いてあるのに、“ログを見るためのコマンドは?”という初歩的な質問に答えられないと、間違いなく不採用です。
実は、逆もしかりです。面接ではとても有能そうにもかかわらず、職務経験が年次の割にパッとしない場合、「掘り出し物かもしれない」と思う面接官だけでなく「性格などに問題があって、チーム作業が難しいのでは?」と、見合った仕事をさせてもらえなかった原因を探そうとする出す面接官も少なからず存在します。
“②身だしなみに問題あり。”も、概ねみなさん理解できるかと思います。スーツはスーツなのだけれど、酷くくたびれていたり、あるいは、私服OKといえども、センスが尖り過ぎた私服で面接に出向くと、「ビジネスのTPOが分からない人なのでは?」ということで、採用見送りなるリスクが高くなります。
そして、①②に問題はないはずなのに、なかなか内定に繋がらない人は、面接担当者に“③受け答えがかみ合ってない。長くて要点が分からない。”と思われていないか、セルフチェックしてみてください。
面接は「一つの質問に、一つの対となる答えが存在するQ&A形式」で進めなくてはなりません。これが大鉄則です。ところが、得意とする分野、あるいは過去の仕事の業績など、話しやすいテーマの質問に対して、ついつい語りするエンジニアは本当に多いです。
しかも、冗長な回答のため、「結局、なにを言いたかったのか?」と面接官に思われ、最終的に「コミュニケーションスキルに問題あり」という評価となってしまうのです。
エンジニアの面接 スキルと知識
失敗する人の傾向について、見た後で、そもそも面接担当者はなにをみたいと考えているのか、改めて整理しておきましょう。
まず一つ目は“職務経験を裏打ちするスキル・知識があるか。”です。
落ちる人の特徴として“①履歴書やエントリーシートの記載と釣り合いが取れない。”という点を紹介しましたが、本当に記載の業績を達成できるだけのスキル・知識があるのかどうかは、面接担当者にとって、絶対に知りたい情報です。
少しでも書類選考通過の確率を上げるために、わずかにかじっただけのことまで記載する人もいます。それが悪いことだとは言いませんが、場合によっては、面接時に自分の首を絞めることになることも理解しておいた方が良いです。
エンジニアの面接 転職理由や志望理由
“転職理由や志望理由”です。要は「なぜ、面接を受けにきたの?」というところです。この質問をする面接官には二つの思惑があります。
一つ目は「熱意」です。その会社で働きたい、という気持ちが強ければ強いほど、会社研究ができているはずなので、抽象的ではない明確な志望動機が聞けるはずです。
二つ目は「性格」です。新たな場所で働きたい、という欲求は、今の場所で働きたくない、という気持ちの裏返しでもあります。ここで重要なのは、今の場所で働きたくない、という気持ちの源泉・理由はなにか? です。
ステップアップのため、といったポジティブな理由であれば良いですが、人間関係が嫌だなど、ネガティブな理由だと、「うーん、この人、また同じようなことを言って、急に離職するのでは?」と面接官にマイナス印象を与えてしまいます。
エンジニアの面接 健康状態
これは現場エンジニアではなく、複数の人事部の方に言われたのですが、“健康状態”も重視しているそうです。
健康状態というと、腕が折れている、足を怪我した、腰痛という肉体的な問題をイメージしがちですが、実際の面接官たちが気にして言うのは、外見からは判断が難しい、“心の病”です。
不規則な生活リズムや、仕事のプレッシャーなどで、IT業界には“心の病”にかかってしまう人は多いです。筆者自身も、サラリーマンエンジニア時代に会社のストレスチェックで問題ありと判定されて、心療内科医の面談を受けたことがあります。
「最初から心の病を持っていると宣言してくれれば、それを加味して配慮できるのに、採用後、現場で症状を悪化してから、打ち明けられても困る」と嘆いていた方もいました。
表情が暗かったり、反応が乏しいと、「この人、大丈夫かな?」と面接官に不安感を抱かせてしまう、という点も知っておきましょう。
エンジニアの面接 プライベートの過ごし方
“プライベートの過ごし方”を知りたい、と考えている面接担当者も多いです。
この質問には“心の病”にもつながる話だと思いますが、「休みの日に気分転換できるか?」やコミュニケーションスキルを推測する意図があります。習い事やスポーツチームに所属しているということであれば、「対人スキルに著しい問題はないだろう」と面接官の安心感につながります。
趣味が明らかになれば、それが切っ掛けになり、既存メンバーとの結束感を一足飛びに強めることも可能でしょう。
一つ、秀逸だな、と思った質問があります。それは、ある30代前半の現場リーダークラスのエンジニアから聞いたものです。それは「最後にこれだけ聞きたいけど、良いですか?」と前置きしてから、「好きなビールの銘柄は?」と聞くそうです。
この質問は、その現場の雰囲気が何となく伝えることができますし、現場に入ったときも、そのときの答えをネタにして、既存メンバーへの紹介もスムーズに進めることができるでしょう。
逆に、そうした質問を「飲みハラ」と感じる人は、その現場を辞退することで、現場に入ってからの「人間関係を原因とする現場離脱」の発生確率を引き下げることも可能です。
まとめ:エンジニアだからと言って、特別なところはない
今回、エンジニアの面接をテーマにして見ていきましたが、おそらく「エンジニアだからといって、特別なことは少ないのでは?」と感じた方が多いのではないでしょうか?
まったく、その通りです。
エンジニアの面接も、当たり前のことをすれば、当たり前に内定確率は高まりますし、その逆に、当たり前のことができていないと、内定確率は下がるのです。