コロナ禍で働き方が変わったというエンジニアの方、あるいは「働く環境をどう考えるべきか」とお悩みの人事やエンジニアリングマネージャーの方。今回、そんな方々へ参考情報を得るべく、4社が語る「スタートアップで働く醍醐味とプロダクトの未来」の座談会に参加いたしました。コロナ禍で働き方や生活が大きく変わりましたが、今もなお成長し続けている4社にどのような影響を与えたのでしょうか。変化していく環境の中で、組織を機能させるため、各社が実施している取り組みやプロダクトの開発にかける思いなど、参考になる場面がたくさんありましたので、ぜひ目を通してみてください。

登壇者プロフィール

みんなのマーケット株式会社 取締役CTO 戸澤 拓也さん
生活関連の出張・訪問サービスに特化した、くらしのマーケットの開発・運営。サービスカテゴリー200種類以上、出店舗数は4万店舗を突破。11月より新CMの放映も開始。

株式会社カラダノート エンジニアリングマネージャー 堀内 栄一さん
子育て・ヘルスケアアプリの展開をしている。子育てアプリは年間ダウンロード率80%を記録し、アプリ開発ではキッズデザイン賞・マザーズセレクション大賞を受賞。11月に上場。

株式会社ビビッドガーデン プロダクト採用責任者・エンジニア 平野 俊輔さん
こだわりの農作物がネットで注文できる食べチョクの開発・運営。今年8月に6億の資金調達をしている。今年7月より始まったテレビCMは社員10人で挑んだとして話題。

株式会社LegalForce 取締役CTO 時武 佑太さん
クラウド型契約書レビュー支援ソフトウェアLegalForce、クラウド契約書管理システムMarshallの開発・運営。まつもとゆきひろさんが技術顧問に就任。

リモートで見えなくなった仕事の状況・人の気持ちが見える環境を構築

―この半年で組織に起きた変化・取り組み事例

コロナ禍によるリモートワークの導入・フルリモートへの移行など、各社とも変化が多かったことと思います。組織に起こった変化に加え、事業の歯車を動かし続ける為に各社でどのような取り組みを行ったのでしょうか。

戸澤さん
ステイホームにより家事代行、ハウスクリーニングの需要が増えましたね。ジョブ型という働き方を新たに導入し、働く場所の制限がなくなったので海外人材が増え、組織としても活気が溢れています。
以前からリモートワークの制度はありましたが、緊急事態宣言を受けてからはフルリモートに移行しています。社員と対面で接することがなくなり、相手の気持ちや仕事の様子が見えなくなってしまったので、メンタルヘルスの面談を実施したり、SlackやZoomで進捗確認をこれまで以上に丁寧にするほか、雑談の時間を設けたりしました。

堀内さん
売上実績が4年間で780%成長、ファミリーDB件数は2年間で320%増加しました。11月に上場したので、さらに事業展開を目指しています。弊社で行った取り組みは、リモートワーク時のルールが曖昧だったので、オンラインMTGのルールなどを明確に文章化しました。それから、リモートワークに移行するにあたり、自宅の環境を整える必要があるので、自宅の環境整備にかかる費用をサポートし、現在は出社とリモートのハイブリッドで活動しています。

平野さん
ユーザー数10倍、売り上げ35倍、開発メンバー5倍と事業規模が一気に変わりました。正直ものすごくハードでしたが、同じ事業がたくさんある中で、我々スタートアップがどう戦うか考えた時に、やはりスピードで戦うしかないんですよ。ユーザー数と注文数が劇的に増加したことでバグも増えましたが、プロダクトを安定させつつ、CMを打ち出したり、アプリをリリースしたりと、守りと攻めを同時にやっていました。
加速しなければいけないフェーズでフルリモートに移行しピンチを感じていましたが、情報の共有と感情の共有の大切さに気づきました。ドキュメントツールを用いて事細かに情報を残し社内で共有し、1on1でどのような気持ちで仕事をしているのか、深く知る機会を作りました。また、collaというツールを使って、社内の雑談の機会を増やしています。

時武さん
業績で言うと、売上は上がっています。商談は全てオンラインに切り替わったのですが、大きな落ち込みはなく順調に伸びています。
コロナの影響を受けて、全社定例がGoogle Meetのストリーミングで配信するようになりましたね。全社定例の10分前に雑談したり、Slackで売上達成のお祝いをしたりと、一体感がうまれました。また、以前行っていたシャッフルランチができなくなったので、シャッフルコーヒーブレイクに切り替え、Discordを使って5,6人が1つの部屋で会話をする場を作りました。コミュニケーションの場を増やすことで、良い雰囲気が作れています。

ユーザーの価値向上がプロダクトの未来のど真ん中

―各社が開発するプロダクトの将来や、これからの取り組み

4社とも対面でのコミュニケーションが難しくなったことで積極的にオンラインコミュニケーションの場を増やし、組織が機能ているようです。前例のない新しい時代に生きていく中で、どのようなプロダクトの未来が待っているのでしょうか。

戸澤さん

コロナ前も今もプロダクトの軸はUXの改善とカテゴリの質と数を増やしていくことに変わりません。それによって世の中の課題を全て解決したいです。組織の課題は、とにかく人が足りないこと。人を増やして、プロダクトを需要に追いつかせていく必要があります。仕事に費やす時間は人生の1/3と言われています。それだけ時間を費やして作っているプロダクトが社会や人生にどのような影響を与えるのか、プロダクトを通してイメージしていく力が必要だし、その方がもっと人生の1/3を有意義に過ごせると思います。そのプロダクトに興味を持てる人と一緒に働きたいです。

堀内さん

日本の世帯数5300万に対し、妊娠育児層の世帯数はごくわずかです。そこで、焦点を未就学児や祖父母世代にまで広げ、日本の5300万世帯に向けて、家族の健康を支え笑顔を増やすべく、プロダクトを強化したいです。

今後事業を拡大するにあたり、エンジニアの組織づくりが必要となります。具体的に言うとSREチームの立ち上げとQAチームの立ち上げです。それに加えて、エンジニア専用の評価制度を作っていこうと考えています。

平野さん

今も今後も変わらず、生産者の方にいかに価値貢献できるかを重視しています。そして、これから取り組みたいことは3つあります。1つめは日本の生鮮業界のEC化率を引き上げることです。コロナの影響で日本の生鮮業界にEC化の波が来ています。また、新鮮なものやこだわったものを買おうという考えも浸透してきたのでチャンスがきています。2つめはデータを扱う組織であること。我々は農業界にアプローチしていますが、中身はプロダクトを使って課題解決をする、データドリブンな会社をイメージしています。例えば、生産者の方が作物を作り出荷する日程をデータで把握しているので注文データも混ぜた事業開発もやりたいです。同様に生産物の販売という観点以外でも会社のビジョンに沿った形で新たなサポートも検討しています。

時武さん

弊社は新プロダクトの展開を目指しています。現在は、契約書の作成・管理の分野はプラットフォーム化できているのですが、その他契約書の依頼受付や、審査後の交渉や締結という分野のプラットフォーム化を図りたいと考えています。もちろん既存プロダクトに関してもまだ完成形ではなく、ユーザーが安心して使えることが非常に重要です。契約書はセンシティブなものなので、安心して使えるような手厚いサポートを考えています。

ビジョンを追い情熱を持って働くこと、それがスタートアップで働く醍醐味

―スタートアップで働く醍醐味

スタートアップ企業が市場で競合とどのように戦うのか、それぞれ苦労もあることと思います。みなさんのプロダクト開発や会社に対する想い、スタートアップで働く醍醐味について聞くことができました。

戸澤さん

私ごとですが、僕は家事や掃除が好きじゃないんです。掃除の時間を、好きなコードを書く時間に使いたいと思ってしまいます。くらしのマーケットを利用することで、それぞれが本当にやりたいことに時間を使い、そして、困ったことをプロの高い技術で解決してもらうことで、充実した人生を送ってほしいです。また、それができるプロダクトを作っていくためには働く人たちの人生も充実している必要があると考えているので、フルリモートを導入したりと社員の生活にも気を配っています。刻一刻と環境が変わる中で、価値提供の速度と量をどうすれば最大化できるか考え、働き方・職場環境を柔軟に変化させていけるのもスタートアップの魅力の一つだと感じています。

堀内さん

ルールを作ったり部門を立ち上げたり事業を拡大しながら、同時進行でエンジニア組織を作っていくこと。それから、必要な仕事を社員1人1人で定義しながら作っていくことがスタートアップの醍醐味だと思っています。例えば今まで誰もやらなかったことや、やりたいけどできなかったことを、社員たちで作っていけるのはスタートアップならではですね。

平野さん

僕たちはビジョンドリブンで仕事をしています。そのビジョンを実現するのがプロダクトだと考えています。自分事化して働くことが重要だと思っていて、そうやって熱狂的に開発することがスタートアップの醍醐味だと考えています。僕自身、入社したばかりの頃は、単純においしいものが好きだとかざっくりしていたけど、現在は生産者を助けたい、私たちのプロダクトでより課題を解決していきたいという想いを強く持つようになりました。

時武さん

私自身、契約書業務はエンジニアの業務と似ていると思っていました。どちらも定義していく作業だからです。扱う言語は違いますが、本質は似ていると思っています。
昨今、エンジニアの仕事環境が良くなっているので、法務部でもそういう風を起こしたいです。そして、ユーザーが求める情報を過不足なく届けたいですね。なぜこの会社でこのプロダクトをつくるのか、またそれをつくることに価値があるのかを社員で共有する必要があります。そんな想いが社会を創っていくし、スタートアップで働く上では大事だと思っています。

―取材を終えて

リモートワークでも組織を機能させるための取り組みとして4社それぞれが、コミュニケーションをとる場を設けたり、雑談チャットを作ったりと様々な工夫していました。リモートにより、見えなくなった業務状況だけでなく、気持ちまで見ようとしていることが、特に印象的でした。1on1やオンライン雑談で自分の気持を共有することで、チームの結束力がより強まったのではないでしょうか。事業拡大に向けて加速していかなければならない状況で、組織が機能するのか不安や問題点が生まれても高速に進化をすることがスタートアップの強みだと実感しました。プロダクトや仕事に熱い想いを持ちたいという人にはぴったりの職場ではないでしょうか。4社それぞれのプロダクトがより勢いを増し、世の中の問題を解決に導いていくことでしょう。今後も4社から目が離せません。

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